【タイトル】
椿の咲くころ
【作者】
溝井悠紀様(埼玉県入間市)
【私の草枕】
「草枕」には椿を擬人化し、妖女に喩える場面がある。鮮やかだが、陽気さは感じられず、恐ろし味を帯びた椿。美しさの中にある毒、見なければよかったと思っても目をそらすことのできない魔力を持つ花。漱石の描写する凄まじい力を持った椿に少しでも近づくことができたならばいいと思う。
【評価】
妖しい作品世界をうまく端的に表現し得ているリトグラフ作品。技巧的にも優れている
【タイトル】
抽象または机上の雑感
【作者】
金森昭憲様(東京都西東京市)
【私の草枕】
夏目漱石の「草枕」を通じて、明治時代の空気を自分なりに解釈しながら抽象的な作品に仕上げました。画面上の展開軸は、中心にある停車場や都会の雑踏のイメージを表しています。そこから記憶がだんだん遡り、まるでフランス映画の様に断片的な物語のシーンが浮かんできたので、コラージュの手法を用いて画面にちりばめました。それと同時に漱石の深層心理にも触れる気持ちで製作しました。
【評価】
2層式構造で布、紙、古地図、古写真などのほか古銭まで張り込んだコラージュ作品。色彩の配合がよく、縦線、横線の使い方もよく、空間の処理、立体感の演出も秀でている労作である

【作品】【タイトルと作者】【評】
《タイトル》
「憐れ」そして「非人情」



《作 者》
杉浦隆夫様
(愛知県田原市)
独特の画面構成がよい。黒の効果、古典的な作品が背景にある
《タイトル》
鏡ヶ池に浮く美女



《作 者》
佐々木優子様
(神奈川県開成町)
一見単調だが表情が良く出ている
《タイトル》
草枕逍遥



《作 者》
北野秀孝様
(熊本市)
「草枕」の世界紹介だけでなく人物の雰囲気がよい
《タイトル》
天に浴す



《作 者》
釘本浩志様
(熊本市)
色彩の妙、発想も面白い。日常目にする風景が生きている
 

 応募総数:20点

【総評】
今回は、残念ながら最優秀賞の該当作品がなかった
【審査員】
中村青史氏(草枕交流館長・文学博士)
宮崎静夫氏(熊本市・画家)