【タイトル】
漱石 心の風景
【作者】
池上晃様(横浜市)
【私の草枕】
第1章より>余の考えがここまで漂流して来た時に、・・・漂うているうちに形は消えてなくなって、ただ声だけが空の裡に残るのかも知れない。・・・余もこれから逢う人物を・・・ことごとく大自然の点景として描き出されたものと仮定して取りこなして見よう。
【評価】
写真をコラージュした心象風景が清潔ですっきりとした作品に仕上がっている。
漱石の心象がよく表現されている。背景をじっと眺めていると有明海や雲仙岳が何となく浮き出てくる。
【タイトル】
草枕2003/壷中の天地に歓喜する
【作者】
出井伸明様(京都府亀岡市)
【私の草枕】
「草枕」は、漱石の美学論文である。我々になじみの羅漢さんやボッティチェルリのビーナスのイメージが見え隠れした。花嫁を乗せた馬はきっとユニコーンだったのだろうし、那美さんと前夫との掛け合いは歌舞伎の一場面を思い出させる。
【評価】
手慣れた作風の中に、様々なイメージが盛られ、観る者を愉しませてくれる。
発想の妙と表現技術が優れている。
 
【タイトル】
峠の思い出
【作者】
東大森敬子様(熊本市)
【私の草枕】
那古井の温泉に行く途中、立ち寄った茶屋のおばあさんとの話で「この坂道をシャンシャン馬に乗った、それはそれはきれいな花嫁さんが登って行った。
【評価】
古布を使った張り絵が親密な温かさと美しさで、作品の一場面を表している。イメージもさることながら色調が鮮やかで、丁寧な作業に感心する。

【作品】【タイトルと作者】【評】
 《タイトル》




《作 者》
岡田ゆかり様
(京都府亀岡市)
精密な技工を使った表現で色彩も美しい。キジと椿に男と女をイメージした着想がよく、技術は抜群である。
 《タイトル》
画工漱石第3の画<想>



《作 者》
神崎亮祐様
(熊本市)
漱石作品を読みこなし、自由な発想のタブローとなっている。色彩も美しく、イメージを鮮烈に表現できている。
 《タイトル》
刹那の出来事



《作 者》
上村順渕様
(熊本市)
誰でも思いつきそうだが、素朴で楽しい絵。
男の表情がいい。技には気になる点もあるが、訴える力を持つ不思議な作品である。
 

応募総数:25点

【総評】
回を追うごとに内容が充実し、応募者皆さんの「草枕」への理解が深くなっているように見受けられた。表現方法も多様化し、まさに現代の「草枕絵」というにふさわしくなってきた。
【審査員】
中村青史氏(漱石館整備計画研究委員長、元熊大教授、文学博士)
宮崎静夫氏(熊本市・画家)