第7回 草枕美術展 入賞作品 | 「私の『草枕』」をテーマとした読書感想画。小説「草枕」のイメージ作品公募美術展(隔年開催)。全国から20点が寄せられ、中村青史草枕交流館長と画家宮崎静夫氏(熊本県植木町)による審査の結果、次の作品が入賞となった。 なお、今回は残念ながら最優秀賞の該当作品がなかった。 応募要領はこちら⇒07kusamakuraart |
賞 | 作者/住所 | タイトル | 私の「草枕」 (作品の意図・イメージ) | 評 |
優 秀 賞 |
溝井悠紀 埼玉県入間市 |
椿の咲くころ | 「草枕」には椿を擬人化し、妖女に喩える場面がある。鮮やかだが、陽気さは感じられず、恐ろし味を帯びた椿。美しさの中にある毒、見なければよかったと思っても目をそらすことのできない魔力を持つ花。漱石の描写する凄まじい力を持った椿に少しでも近づくことができたならばいいと思う。 | 妖しい作品世界をうまく端的に表現し得ているリトグラフ作品。技巧的にも優れている |
金森昭憲 東京都西東京市 |
抽象または机上の雑感 | 夏目漱石の「草枕」を通じて、明治時代の空気を自分なりに解釈しながら抽象的な作品に仕上げました。画面上の展開軸は、中心にある停車場や都会の雑踏のイメージを表しています。そこから記憶がだんだん遡り、まるでフランス映画の様に断片的な物語のシーンが浮かんできたので、コラージュの手法を用いて画面にちりばめました。それと同時に漱石の深層心理にも触れる気持ちで製作しました。 | 2層式構造で布、紙、古地図、古写真などのほか古銭まで張り込んだコラージュ作品。色彩の配合がよく、縦線、横線の使い方もよく、空間の処理、立体感の演出も秀でている労作である | |
奨 励 賞 |
杉浦隆夫 愛知県田原市 |
「憐れ」そして「非人情」 | 絶筆『明暗』は、テーマに於いてドストエフスキーの『白痴』、手法に於いてウィリアム・ジェームズ『意識の流れ』を意識して書かれた。同じように、メジェレコフスキーの『神々の復活―レオナルド・ダ・ヴィンチ』及びダ・ヴィンチの絵画から触発されて、漱石は「非人情」=西欧の観念を得た。 那古井の湯治場で、漱石は、その西欧的な非人情を超剋する「憐れ」というものを実体験したのであろう。那美さんの「ほほほほ・・・・・・」はモナリザの口辺に浮かぶ微笑のパロディではなかろうか。 | 独特の画面構成がよい。黒の効果、古典的な作品が背景にある |
佐々木優子 神奈川県開成町 |
鏡ヶ池に浮く美女 | いろいろと複雑な思いで身を水面に浮かばせている女。それを描く画家。 | 一見単調だが表情が良く出ている | |
北野秀孝 熊本市 |
草枕逍遥 | 近代国家へ邁進する時代状況の中で、東西の文学に道曉したある画工(漱石)の芸術への遁世の思索の旅を視覚化してみました。汽車やシェークスピアに代表される西洋文明に晒される中でふと目にした大徹和尚の書から、東洋趣味へ誘われる漱石。天水のミカン畑は、大いに慰めになったと思われる。画工の胸中のキャンパスは、オフェーリアと重なる那美さんが捉えられていた。 | 「草枕」の世界紹介だけでなく人物の雰囲気がよい | |
釘本浩志 熊本市 |
天に浴す | 『とかくこの世は住みにくい』・・・・・ふと空を見あげる・・・・・ 現世の住みにくさから天空へのあこがれ、理想世界への希望と夢を天女という理想の姿をかりて描く、夏目漱石の淡い恋心(欲望)の化身でもある。 | 色彩の妙、発想も面白い。日常目にする風景が生きている |
優秀賞 「椿の咲くころ」 (溝井悠紀) |
優秀賞 「抽象または机上の雑感」 (金森昭憲) |
奨励賞 「「憐れ」そして「非人情」」 (杉浦隆夫) |
奨励賞 「鏡ヶ池に浮く美女」 (佐々木優子) |
奨励賞 「草枕逍遥」 (北野秀孝) |
奨励賞 「天に浴す」 (釘本浩志) |